世はPS3が発売されて既に数年を経ていました。ゲームはハイレベルなグラフィックでぬるぬる動くのが当たり前の時代、だれが好き好んで据え置き機で紙しばいゲーなんてやるんだよ……。
そうなりそうなものですが、この『デュナミス15』はそれなりの注目を浴びて生を受けました。というのも開発の5pbが『シュタインズゲート』の大ヒットで評価を爆上げしており、それに続く新プロジェクト『サスペンスフィクションADV』の第一段として世に送り出されたからです。
公開された事前情報も興味を引く内容でした。
《東京から離れた孤島で平穏な学園生活をおくる主人公達。
しかしその実態は優秀な遺伝子を採取するための研究施設だった。
生徒達はみなクローンであり、彼らの中でそれを知る者はいない。
ループする世界、5つの視点と5人の主人公。
暴走するクローンたち。真実を知るとき絶望が始まる》
やばい、超面白そう!
散々やり尽されて食傷気味に感じるループものだが題材がクローンである。これはもしやタイムリープ以外の新しいループものを見せてくれるんじゃないだろうか!
そんな期待を胸に手に取った本作は「う、うーん」という出来でした。
※ネタバレ等配慮は一切ないのでご注意ください。
▼無駄に多いバイオレンスシーン
CERO“D”(17以上対象)なのだから当然でしょ?と言わんばかりにグロ・暴力シーンが盛り込まれている本作。パケ裏からして目を背けたくなる大惨事だ。
△迫真の表情でチェンソーを振り回す倭一花さん
まあシナリオ上必要な演出なら仕方がないだろう。実際クローンとしての末路、その惨たらしさは心に来るものがあったし物語に一層引き込まれた。こういうのならいい。
と思ってたけどやり過ぎなんじゃ!
終盤でクローン全体が暴走し互いに殺しあうという展開になるのだが、このゲームはループものである。凄惨なシーンを「もうたくさんだよ……」というぐらいには見せられるはめになる。
5pb、お前絶対暴力シーン無理やりねじ込みたくてこういうシナリオにしただろ!?キャッチーなのは分かるが節度ってものがある。
断っておくが僕はバイオレンスなのが嫌いなわけじゃない。しかしせっかくクローンを軸に上質な世界設定を作っているのに本筋ではないところをOPから紹介記事までプッシュし過ぎるのはいかがなものか。
まあ何が言いたいのかって、血みどろファイトが見たくてこのゲーム買ったんじゃないんですと言いたい。
▼不思議な力が世界を救う
このゲームがループものなのは先に述べたが、その理由がよりによってオカルトである。クローン達の結末を憂う幽霊の想いが不思議な力となり、世界はループしていた。いやーいい話だ。
納得できるか?いや無理だ。
散々ヒトクローンだ遺伝的問題だと科学的に話を進めてきておいて話のオチがこれである。もっと上手なループ理由を用意できなかったのか。一応物語としてはハッピーエンドとまではいかないが光明のある終わり方でまとまっているので余計にそこが惜しい。
このゲームね、設定面白いんですよ。練りきれてないところはあるけれど世界観は満足いくものであったし暗めの物語も個人的にはズドンと来た。最後の最後に不満の塊が配置されてるからプレイ後感がよろしくないだけで(そこが肝心だが)終盤まで楽しませてくれたんです。
なのに、なのに、もったいねぇ。世間での評価はいいとこ佳作というところだろう。
ちなみに『サスペンスフィクションADV』シリーズだが、第2弾の『ディスオーダー6』が手に取ることも憚られるほどの酷評っぷりだったことを報告しておく。
以後、現在までサスペンスフィクションADVの続編は作られていない。