感性を襲うウルトラバイオレンス。Welcome to this crazy time。
そのセンスと濃さに信頼を置いている友人からの薦めだったので警戒して期待して視聴に臨んだのだが、想像をはるかに超えて危険なブツだった。
この作品を解説するのに理屈の話を持ち出すのは下策のように思う。それらしい舞台背景や現代社会と照らし合わせた論説があるようだが、上等な料理にハチミツをぶちまけるが如きというやつだろう。僕はやばいものを見たのだ。
時折こういう思想や教養をスっ飛ばして精神にブチかましてくる作品と出会うことはあるが、その中でも時計じかけのオレンジは強烈に映えるものだった。
憧れることはない。むしろ嫌悪する存在であるのは間違いないのだが、揺さぶられてしまったという実感がある。一応内容に触れておくと、暴力と性描写がこれでもかってぐらいある。それぞれ単体でならそれほどインパクトがあるように感じないのだが、絡まった1シーンとして見るとそれが僕の言う『やばいもの』になっているのだ。
全身タイツの上にパンツを履いたような恰好をしている主人公達を全く笑えないというそら恐ろしい気分を味わった。
ちなみに英国では観賞者に相当な悪影響があったとされていて、結果として自重する形で長らく上映が禁止されていた。原作者が「こんな小説書くんじゃなかった」と後悔するのも主演役者に悪役オファーばかり来るようになったのも作品を見た後だと納得できてしまうのだからやはりやばい。
傑作なのは間違いないのだが内容が内容なので万人向けではないし、受け入れられたら世も末という感じはある。視聴するなら自己責任でなるべく心に余裕があるときに見るのがいいでしょう。
余談
原作小説では『その後』の話があり、要約すると「若気の至りで悪いことするのは誰にも止められないぜ」という終わりを見せるらしいのだが、本作の監督に「蛇足だから」という理由でカットされたらしい。これは英断だろう。